Q&A / Frequently Asked Questions
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品質管理関連
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2.28 薬剤の投与時安定性等を評価する際、指標となる温度はあるのか。また、地域によって考慮すべき温度は変わるのか
A:
ICHガイドラインQ1A(R2)では、「溶解又は希釈後の製剤の安定性についても、調製方法、保存条件並びに溶解又は希釈後の使用期間についての表示のための情報を提供するために必要に応じて実施する。」とされており、正式な安定性試験の一部として実施することが求められている。また、ICHガイドラインQ8(R2)では、「推奨される温度及び想定される希釈濃度域において、推奨される使用時の有効期間についても示されるべきである」とされている。しかし、これらのいわゆる使用時の安定性試験を行う温度条件についてガイドライン上の規定はない。
ただし、実際に溶解や希釈を行う環境とはかけ離れた条件下での安定性試験結果は、情報の有用性が少ないことから、一般的に、実際に投与液を調製する環境を模した温度条件で試験することになる。また、調製した投与薬液を冷所で保存することを規定する場合などは、その温度での安定性が必要となろう。
さらに、地域により投与液を調製する環境が異なる場合には、各地域での使用実態を反映した条件下での使用時の安定性試験が妥当と思われる。
回答:---
2.27 医薬品に配合される添加剤の品質確保は、医薬品添加剤GMP自主基準によりガイドライン化されているが、医薬品の容器や包装資材の製造にも、同様のガイドラインは適用されるのか
A:
医薬品の添加剤については、「医薬品添加剤の製造管理及び品質管理に関する自主基準(日本医薬品添加剤協会)」や「IPEC-PQG Joint GMPガイド(the International Pharmaceutical Excipients Council / the Pharmaceutical Quality Group (PQG)」などがありますが(本Q&Aコーナーの「GMP関連」、「医薬品添加剤の国際調和関連」もご参考下さい)、回答時点(2014年3月)で、包装資材に係わるGMPに相当する基準やガイドラインはありません。包装資材については、資材の形態や、資材メーカーにおける製造方法・管理方法等の実態に則して、予め自社で標準化した管理手順(監査方法、契約書、品質取り決め書等)を作成しての管理が一般的に取られているのではないかと考えられます。なお、2013年8月に出されたGMP施行通知改訂では、このような包装資材も含めた原材料メーカーの管理が厳しく求められるようになっています。
回答:---
2.26 バイオ医薬品の安定性試験でも、加速試験を用いての使用期限予測をすることはできますか
A:
ICHガイドラインQ5C「生物薬品(バイオテクノロジー応用製品/生物起源由来製品)の安定性試験」では、有効期間は実保存温度、実保存期間で実施された試験成績に基づいて設定されるべきであるとあります。また、生物薬品における変化・分解は、長期保存期間中の時間経過の中の各時間間隔において、経過した時間としては同じであっても、時点が異なれば必ずしも同じ内容/程度の変化にならない場合が多いとあり、ましてや加速試験を用いての使用期限の予測は非常に難しいと解釈できます。
生物薬品における変化・分解のパターンが明らかとなり、同様な変化が目標としている保存条件下で起きるかどうかを検証できれば、原理的には加速試験を用いて使用期限を予測することも可能ですが、長期保存の予備的・補足的データとして、あくまで目安として用いられることが一般的なようです。
有効期間を設定することは出来ませんが、ある特定の反応(例えばN末端の環化反応)に着目した場合は、アウレニウス式等を用いて実保存温度の反応速度を予測可能であることは論文などで報告されているようです。
回答:---
2.25 懸濁液を滅菌して、無菌性を保障することはできますか
A:
日局16参考情報微生物殺滅法には、加熱法、照射法(γ線、電子線、X線、高周波など)、ガス法(酸化エチレンガス、ホルムアルデヒドガス、過酸化水素ガス、二酸化塩素ガスなど)、ろ過法などがあげられています。
通常は、無菌環境下で製造された無菌原薬を滅菌された溶液に分散させて無菌の懸濁液を製造します。この場合は、製剤製造工程も無菌環境下で操作する必要があります。懸濁液を調製してから、その懸濁液を滅菌するには、γ線や電子線による照射法、または、加熱法による滅菌が考えられます。それ以外の方法では、分散質である固体の内部まで滅菌することは困難です。ただし、加熱法の場合は、分散質の固体内部は湿熱状態ではなく乾熱状態となります。一般的に乾熱滅菌の温度は湿熱滅菌よりもかなり高い温度が要求されるため、懸濁液を通常の水性注射剤のように高圧蒸気滅菌機によって最終滅菌することはできないことから、現実的には加熱滅菌法の採用は困難と考えられます。
回答:---
2.24 使用期限を設定するに当たり、化学反応の速度の温度依存性がアレニウス式に従わない場合は、加速試験を用いずに長期保存試験条件で安定性試験を行うしかないのでしょうか
A:
ICHガイドラインQ1A(R2)「安定性ガイドライン」及びQ1E「安定性データの評価に関するガイドライン」では、有効期間を設定するための方法が記載されています。どちらのガイドラインにおいても、基本的に長期試験の結果にもとづき有効期間を設定することになっていますが、長期試験の結果を外挿することはできます。ただし、外挿する場合は、少なくとも、分解機構について明らかになっていることや数式モデルの適合性、仮定した変化のパターンが正しいことなどに基づいて、有効期限の外挿が可能であることを正当化しなければなりません。
以上のように、加速試験の結果からのみでは有効期間を設定することはできませんが、分解挙動がアレニウス式に従わなかったとしても、長期試験の外挿を正当化できるならば、長期試験の結果に基づいて有効期間を外挿することは可能と考えられます。
また、有効期間を設定する方法ではありませんが、医薬品の分解の温度依存性を予測する方法として、アレニウス式の他に、ワイブル確率紙を利用する方法もあります。
回答:---
2.23 低湿度条件下で安定性試験をするのはなぜでしょうか
A:
半透過性の容器に包装された製剤については、物理的、化学的、生物学的及び微生物学的安定性に加えて、予想される水分や溶媒の損失(揮散による内容物の濃縮)について評価し、低い相対湿度条件において貯蔵に耐えることを示す必要がある。
室温保存の場合、試験の種類、保存条件、期間として下記が推奨されている。
試験の種類
保存条件
申請時点での最小試験期間
長期保存試験
25℃±2℃/40%RH±5%RH 又は30℃±2℃/35%RH±5%RH
12ヵ月
中間的試験
30℃±2℃/65%RH±5%RH
6ヵ月
加速試験
40℃±2℃/25%RH以下
6ヵ月
回答:---
2.22 安定性試験におけるマトリックス法、ブラケット法とはどのようなことを指すのでしょうか
A:
ブラケッティング法とは、全数試験において設定する全測定時点において、含量や容器サイズ等の試験要因の両極端のものを検体とする安定性試験の手法をさす。この手法は、中間的な水準にある検体の安定性は、両極端の検体の安定性により示されるとの仮定に基づいている。一連の異なる含量の製剤が試験される場合、製剤の成分が同一であるか類似しているならば、本法が適用できる。(例:同様の組成の原料顆粒を使用して製造した含量違いの錠剤、異なるサイズのカプセルに異なる量の同一組成の成形粉末を充填して製造したカプセル剤)。
マトリキシング法とは、ある特定の時点で全ての要因の組み合わせの全検体のうち選択された部分集合を測定する安定性試験の手法である。連続する2つの測定時点では、全ての要因の組み合わせのうちの異なる部分集合を測定する。この手法は、ある時点における全検体の安定性は各部分集合の安定性により代表されているという仮定に基づいている。従って、ロットの違い、含量の違い、同じ容器/栓システムのサイズの違い、また、場合によっては異なる容器/栓システムの違いに起因するのかを明らかにする必要がある。(H14.7.31 医薬審発07310004を参照)
回答:---
2.21 造粒時の水分測定を行っていますが、これはPATと言えるのでしょうか。PATとして成立するための条件というのはあるのでしょうか
A:
測定を行うだけではPATとは言えません。FDAによるPATの定義では、最終製品の品質を保証することを目標として、原料および中間製品ならびにプロセスの重要品質と性能特性をタイムリーに計測することで製造を設計・解析し、管理するシステムとしています。
すなわち、製造プロセス上で重要な変動要因を特定し、その要因をどのようにコントロールすれば良いかを明らかにした上で、その要因をリアルタイムにモニターして、製造工程にフィードバックするとともに、品質担保の指標とすることがPATの考え方といえます。
回答:---
2.20 OOTというのは、具体的にどのようなデータから判断するものなのでしょうか
A:
試験結果がOOTかどうかについて規定したガイダンスはありませんので、各社が手順書などで設定しています。
例えば、シューハート管理図のUCL/LCL(上方/下方管理限界)や過去の試験結果の平均±3σを超える試験結果をOOTとする方法があります。
また、安定性試験においては、含量や分解物などが時間とともに変化する試験結果についてはOOTを判断する必要があります。この場合は、試験結果の直線回帰式などから試験結果の予想値を算出し、「予想される値±k×s」を超えた場合にOOTとする方法(Regression control chart method)があります。ここでsは回帰式からの2乗平均平方根誤差、kは倍数です。kは危険率を考慮して決定します。
他のバッチの各時点での安定性試験結果の「平均値±k×s」で管理する方法(By time point method)や、他のバッチで得られた各ロットの各時点までの試験結果を用いて回帰直線の傾きを求め、バッチ間の傾きのばらつきの倍数から管理図を作成し、試験中のバッチで得られた傾きが管理範囲にあるかどうかでOOTを判断する方法もあります(Slope control chart method.)。

参考):
PhRMA CMC Statistics and Stability Expert Teams, "Identification of Out-of-Trend Stability Results", Pharmaceutical Technology (- 2003)
回答:---
2.19 OOTとOOSという言葉を聞きますが、どう違うのでしょうか
A:
OOSはOut-of-Specification (result)(規格外試験結果)、OOTはOut-of-trend (result) (傾向外試験結果)の略です。
OOSは試験結果が規格範囲外になった場合をいいます。OOTは試験結果が規格外にはなりませんが、それまでに得られている試験結果の傾向から外れていることを意味します。どちらの場合も試験結果の逸脱となります1)。
OOSとなる試験結果が発生した場合の調査手順についてFDAからはガイダンスが出されています2)。
このガイダンスの中では、OOTについても同様に扱うことが有用であるとされています。

1) Guidance for Industry: Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulations (September 2006)
2) Guidance for Industry: Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production (October 2006)
回答:---
2.18 医薬品の規格と分析法誤差の考え方について
例えば含量規格が95%〜105%として製造販売承認を受けた医薬品の品質試験の結果、95%という結果が得られたとします。安定性に問題がない(経時変化を示さない)ことが示されていることを前提として、当該ロットは出荷可能ですか?規格下限値、規格上限値と分析法ばらつきの関係についてどのように考えるのが適切でしょうか
A:
95%、105%というのは古い製品に対して設定されていたもので、現在は95.0%、105.0%とするのが一般的となっています。今回95%で出荷できるかどうかについては、もともと規格値が3ロット以上のデータで設定されていると考えられることから、出荷は可能と(出来ると)判断されます。
ただし、出荷試験結果が頻繁に規格上下限になることは考え難く、今回の御質問のように95%になった場合には、Out of Trend (OOT)になると考えられます。OOTの判定や対応手順は各社で設定されていると思いますが、一般的に手順書には調査、追加試験(必要に応じて)、判定が規定されます。OOTとなった試験に関る調査を行い、原因が特定できなければ、複数回の追加試験を行ない、その結果をもとに品質管理部門で出荷判定を行なうことになります。出荷判定に当たっては、分析方法のばらつきや製剤の安定性、これまでのロットの傾向、原材料や製造工程の変動、試験項目の重大性などを勘案する必要がありますが、例えば、追加試験の個々値が全て規格範囲内であれば、出荷を許容できる場合もあります。
本来、定量の試験法は製剤のバラツキ、試験法のバラツキを考慮して設定されているはずであり、今回のOOTの原因を明確にする必要があります。 従って、分析のバラツキや製剤の安定性や特性などを考慮した上で、出荷するリスクをどのように考えるかが重要です。
回答:国際委員会
2.17 空路で輸送する場合、空路では温度が極端に低くなり、地上に到着時通常温度となるように極端な場合、凍結と融解を繰り返した場合の安定性試験に関するGL等はあるのでしょうか(会員からの投稿質問)
A:
ご質問のような安定性試験に関するガイドラインはありません。そのため厳密な温度管理が必要な製剤(DDS注射剤など)では、輸送形態(箱、保温材などなど)により温度変化が少ない条件を確認する必要があります。通常、定められた貯法(保管温度)の範囲で輸送できるように輸送形態について特別な配慮をした上で、医薬品とともに温度記録ができるディバイスを設置して輸送を行います。そして、医薬品が輸送され保管されるまでの間の温度をモニタリングし、逸脱がなかったか確認します。保存温度からの逸脱があった場合は、医薬品の安定性試験結果に基づき、その逸脱が品質に及ぼす影響を評価します。必要に応じて追加の安定性試験が必要になる場合もあるでしょう。凍結が医薬品の品質に影響を及ぼす可能性がある場合、凍結融解(Freeze-Thaw)試験を実施します。凍結融解試験の条件(温度、期間、凍結融解の繰り返し回数など)を規定するGLはないため、医薬品の特性に応じて設定されます。PDA Technical Report No. 39 "Guidance for Temperature-Controlled Medical Products: Maintaining the Quality of Temperature-Sensitive Medical Products through the Transportation Environment"にThermal cycling studyの例として凍結融解の条件が示されています。

回答者の経験では、航空会社では輸送中の製品に対する温度保証をしない場合が多く、そのため温度記録計を輸送時の梱包内に入れ複数回輸送試験を実施した上で輸送条件(最も安定した包装形態)を決定しました。また、注意すべき点として、通関までの期間保管されるエリアでの温度管理も重要となります。季節によって外気温度が異なりますので、思わぬところで封入していた保冷剤の効果が切れてしまい、問題となったことがあります。こうした点にも十分配慮した輸送形態とすることが求められます。
回答:国際委員会
2.16 Real Time Releaseを実施した場合、申請書に記載された試験項目(最終製品試験)であっても出荷試験としての品質試験は必要ないのでしょうか
A:
リアルタイムリリース試験を採用した場合、出荷にあたって該当する試験項目(最終製品試験)を試験する必要はありません。ただし、リアルタイムリリース試験の結果が範囲外になった場合、あらかじめ定められた条件を満たせば、その規格項目に該当する従来の最終製品試験を実施し、規格に適合すれば、出荷することができます。
『「製剤開発に関するガイドライン」、「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」、「医薬品品質システムに関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)』(事務連絡平成22年9月17日)では、以下のQ&Aが掲載されていますので参考になります。

2.2リアルタイムリリース試験
Q2: リアルタイムリリース試験は最終製品試験が不要となることを意味するか。
A2: リアルタイムリリース試験によって必ずしもあらゆる最終製品試験が不要とされるとは限らない。たとえば、申請者は一部の特性に限ってリアルタイムリリース試験を提案しても、又は全く提案しなくとも差し支えない。(リアルタイムリリース試験と関係する)すべての重要品質特性(CQA)がパラメータの工程内モニタリング及び/又は原料の試験により保証されている場合にはバッチリリースに最終製品試験が不要となることがある。安定性試験又は各極の規制要件など、特定の規制プロセスについては何らかの製品試験の実施が求められるだろう。
Q3: 製品規格は、リアルタイムリリース試験を適用する場合にも必要か。
A3: 必要である。製品規格 [「新医薬品の規格及び試験方法の設定について」(平成13年5月1日医薬審発第568号、医薬局審査管理課長通知)及び「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の規格及び試験方法の設定について」(平成13年5月1日医薬審発第571号、医薬局審査管理課長通知)] は、リアルタイムリリース試験を適用する場合にも設定され、試験実施時にはこれに適合する必要がある。
Q7: リアルタイムリリース試験の結果が規格外となる、又は、規格外に向かう傾向が認められる場合、最終製品試験を製品の出荷判定に用いることは可能か。
A7: 不可能である。原則として、リアルタイムリリース試験の成績が製品の出荷判定に通常使用されるべきであり、最終製品試験による代替はすべきでない。いかなるものであれ、規格外については調査し、規格外に向かう傾向が認められる場合は適切に追跡管理する必要がある。しかしながら、製品の出荷判定はこれらの調査の結果に基づいて行うことが必要となる。製品の出荷判定は、製造販売承認の内容及びGMPを遵守して行う必要がある。
回答:国際委員会
2.15 Real Time ReleaseとReal Time Release Testingとは、どう違うのですか
A:
平成22年9月17日の事務連絡の「製剤開発に関するガイドライン」、「品質リスクマネジメントに関するガイドライン」及び「医薬品品質システムに関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)についてQ9に以下の記載と回答があります。


Q9: 「リアルタイムリリース」と「リアルタイムリリース試験」の違いは何か。
A9:  ICHQ8(R2)においては「リアルタイムリリース試験」は「工程内データに基づいて、工程内製品及び/又は最終製品の品質を評価し、その品質が許容されることを保証できること。通常、あらかじめ評価されている物質(中間製品)特性と工程管理との妥当な組み合わせが含まれる」と定義している。
 改定前のガイドライン文書中(ICHQ8(R1)、step2)の「リアルタイムリリース」という語は、この定義をさらに正確に反映させ、製品の出荷判定との混乱を避けるために、最終的にICHQ8(R2)第2部において「リアルタイムリリース試験」に改められた。
回答:国際委員会
2.14 抗体医薬などのバイオ新薬は、製造や品質管理が難しいと聞きますが、これまでの医薬品とどう違うのでしょうか
A:
バイオ医薬品の品質管理はその製品特性と製造プロセスの二つの側面から考慮する必要があります。

  1. バイオ医薬品の製品特性
    抗体医薬、遺伝子組換えタンパク等のバイオ医薬品は低分子化学合製品に比較して高分子でしかもその多くは糖鎖を含む複雑な構造を有します。一般にバイオ医薬品の多くは、有効成分が変化しやすい不安定な糖タンパク質であるため、その構造や品質については、物理的化学的、免疫学的、生物学的方法などを用いて徹底的な解析が求められます。特に活性発現に重要な役割を担う糖鎖構造の解析には最先端の分析法を動員する必要があり、目下の課題です。また培養により製造するため不純物の多くも高分子であることから、有効成分や不純物がヒトに何らかの免疫応答を引き起こす可能性についても安全性の面から十分に留意する必要があります。さらに、ヒトや動物の細胞を用いて生産される遺伝子組換え医薬品や細胞培養医薬品においては、ウイルス面からみた安全性の確保も重要です。従って、低分子化学合成医薬品に求められる基準を遵守しつつ、バイオ医薬品の製造・品質特性に応じた基準が上乗せされる分コスト面での負担も大きくならざるを得ません。


  2. バイオ医薬品の製造側面
    バイオ医薬品はヒトや動物細胞を用いた培養法により製造されるためその品質は製造プロセスに依存する部分が多く、品質やプロセスの同等性の確保が求められます。製造上の特徴として、(1)セルバンク(細胞基材)、(2)細胞培養プロセスによる目的物質の生産、(3)培養物からの単離・精製があげられます。このうちセルバンクは、遺伝子組換え技術で目的物質を生産するための細胞基材であり、遺伝子発現構成体の構築から、マスターセルバンクの構築・管理、さらには実際の製造に使用されるワーキングセルバンクの構築・管理が製造上の最も重要な項目といえます。これらの製造プロセスは当然GMPで厳格に規定されることになります。その他主な管理項目として、製造方法の変更管理(スケールアップを含む)、原材料の管理(トレーサビリティを含む)、製品管理(トレーサビリティを含む)、製造管理(微生物、ウイルスの除去とバリデーション)、機器・設備の管理(汚染防止など)などがあります。
回答:国際委員会
2.13 Real time releaseが話題になっていますが、医薬品にはいろいろな規格が決められているので、1つの規格項目について可能でも、すべてが可能にならないと実現出来ないのではないでしょうか
A:
この質問は、RTRとRTRTが混同されているような気がします。 Real-Time Release(RTR)は、Real-Time Release Testing(RTRT)と、GMP上必要な品質に関する出荷の判断がプラスされたものです。一方、RTRTとは、工程の理解及び工程での品質の作り込み(QbD:Quality by Design)やPATツールを用いた重要工程モニタリング等により、出荷試験のいくつかの項目を省略することです。
なお、2006年にStep 5となったICH Q8ガイドライン、及び2007年11月に発表されているAnnex(Step2)には、RTRについて記載されていますが、2009年8月にStep4となったICH Q8(R2)では、RTRという表現はなく、RTRTとなっております。したがって、現在ICHガイドラインでは、RTRTとなっていることに留意する必要があります。
回答:国際委員会
2.12 PATというとNIRが出てきますが、これ以外に認められているものとしてはどのようなものがあるのでしょうか
A:
(認められているという意味が微妙ですが)分析法としてはIR、ラマン、テラヘルツ、アコースティックエミッション、レーザー誘起ブレークダウン分光法、熱浸透率計などがあります。その他、一般に使用されている温度計や水分計、電流/電圧計、重量センサー、打錠機の圧力センサーなどもPAT機器といえます。
回答:国際委員会
2.11 医薬品の包装容器から取り出した後のいわゆる開封後の安定性について保証を考えた場合、無包装状態で温度・湿度・期間についてどのように安定性試験を実施すればよいでしょうか
A:
現実的には各社で独自の条件を設定して安定性試験を実施しており、明確に規定された条件は無いと思います。

開封後の保証ですが、「開封後」といいますといろいろな場合が想定され、それらを全て「保証」することは困難であろうと思います。従いまして、保証というよりは「目安」といった感覚の方が現実的ではないかと思います。

では、開封後としてどのような条件を考えたらよいかですが、(社)日本病院薬剤師会では、「錠剤・カプセル剤の無包装状態での安定性試験について(答申)」とする答申を行っておりますが、これはまだ規定されたものとはなっていません。この答申によりますと、

  1. 温度に対する試験:40℃±2℃(遮光・気密容器(瓶))3ヶ月
  2. 湿度に対する試験:
      75%RH±5%/25℃±2℃(遮光・開放)3ヶ月
      (夏季)75%RH±5%/30℃±2℃(遮光・開放)3ヶ月
      尚、90日処方が認められている製剤は、保存期間6ヶ月。
  3. 光に対する安定性試験:曝光量 60lux/hr以上(気密容器)とされています。


尚、病院・薬剤部における環境につきましては、小野薬品⑭水谷らによる調査結果があります。このような結果を下に、試験期間や条件を設定することも検討すべきではないかと考えます。

参考文献
水谷、笹谷、“病院調剤室における温湿度分布と防湿包装の設計”、製剤と機械、平成2年6月15日
回答:国際委員会
2.10 現在、40℃/75%RH/6ヶ月のデータで室温3年の品質保証期間を設定しています。
室温4年、又は5年を保証するには、40℃/75%RHでそれぞれ何ヶ月安定であればよいでしょうか?活性化エネルギーの計算により算出できると思いますが、よろしくお願い致します
A:
この質問については、次のように考えてみたいと思います。
通常、加速試験の結果は、あくまで加速試験の結果であり、室温での安定性を保証あるいは予測するものではありません。医薬品の分解・劣化のメカニズムなどを十分に検討した上で、安定性の予測を検討することが必要となります。平成15年6月3日に出されました「安定性データの評価に関するガイドライン」(医薬審発第0603004号)なども参考になります。
ただし、以下の仮定基づき、5年を保証するために40℃/75%RHで何ヶ月安定でなければならないか推定はできます。当然のことながら仮定が成立しない場合には推定は無効です。

仮定:反応速度定数には、Arrhenius式が成立し、安定性に関する分解反応は1次反応で進む。また、この反応に湿度は影響しないこと。40℃/75%RHの6ヶ月(0.5Y)における分解と室温で3年(3Y)の分解が同じである分解の活性化エネルギーを有する。
最初の仮定から室温での分解速度定数(k室)と40℃での分解速度定数(k40)の比は、次のようになり定数となります。
k40/k室 = Exp(E/R(1/T298-1/T313))    ・・・・・(1)式

次に、1次の分解反応(40度)は次式で表されます。
A = A0 x Exp(-k40 x t)      ・・・・・(2)式
A : t時間後の残存量、A0 : 初期薬物量

ここで40℃/75%RHの6ヶ月(0.5Y)における分解と室温で3年(3Y)の分解が同じであるとしますと、(2)式より次式が誘導されます。
Exp(-k40 x 0.5) = Exp(-k室 x 3)  ・・・・(3)式

つまり  k40 x 0.5 = k室 x 3 ⇒ k40/k室 = 6 ・・・(4)式

さて、室温で4年(4Y)もしくは5年(5Y)を保証するためには、(3)式より
k40 x X = k室 x 4 (or 5) 従って、X = k室/k40 x 4 (or 5)

この式に、(4)式の結果を入れると  X = 1/6 x 4 (or 5)  つまり、X = 0.67 or 0.83 (Y) 4年保証するためには、8ヶ月、5年保証するためには、10ヶ月安定であることが必要となります。
回答:国際委員会
2.9 「医薬品の安定性予測のための加速試験は40℃/75%RHで行われますが、40/75%RH/6M で起こる薬物の含量低下を短期間で予測するため、60℃/75%RHに温度を上げた(湿 度 はそのまま)としたら何日で40℃/75%RH/6Mと同等の含量低下を起こすことができるでしょうか?薬物の分解は温度依存的にアレニウス式に従うものとします」

最終的な回答で、E=1,5,10,15,20,25kcal/molの場合ということで、それぞれt60を計算していただいています。ここで40℃での6ヶ月が25℃での3年に相当するのはE=22.1kcal/molである(吉岡澄江、医薬品の安定性、p.142, 1995、南江堂)という記載があります。
大変恐れいりますが、E=22.1kcal/molでのt60について計算していただけないでしょうか
A:
まず、E=22.1kcal/molの時に25℃における有効期間が3年となることを確認します。

前回回答した方法と同じ考え方で25℃の反応速度と40℃の時の反応速度の比をアレニウス式から求めると
k2/k1= 10(Ex0.000035)
k2:40℃の反応速度、k1:25℃での反応速度、E:活性化エネルギー
ここでE=22.1kcal/molであることから
k2/k1=100.7765=5.9873
となります。
したがって、40℃で6M(t40)のときに、25℃で何ヶ月(t25)なるかは次式から求められます。
t25/t40=5.9873
t25=5.9873x6=35.87(M)
したがって、「医薬品の安定性」に記載されていますように約3年となります。


次に、同様にしてE=22.1kcal/molのときで60℃の場合(t60)を考えて見ます。
k2/k1=100.9282=8.476(k2:60℃の反応速度、k1:40℃の反応速度) となります。
したがって、t40/t60=k2/k1=8.476となることから、t40=6Mのときには、
t60=0.707(M) 約21日となります。

<追記>
なお、SI単位の採用によりcal (カロリー)ではなく、J(ジュール)が単位として使用されるようになった。今回の計算においてもJで計算する方が好ましい。その場合、1 cal = 4.2Jとして計算を行う。
回答:国際委員会
2.8 医薬品の安定性予測のための加速試験は40℃/75%RHで行われますが、40/75%RH/6Mで起こる薬物の含量低下を短期間で予測するため、60℃/75%RHに温度を上げた(湿度はそのまま)としたら何日で40℃/75%RH/6Mと同等の含量低下を起こすことができるでしょうか?
薬物の分解は温度依存的にアレニウス式に従うものとします
A:
この質問に回答するためには、幾つかの仮定が必要となります。今回、次のような仮定で回答させていただきます。

 

  • 薬物の含量低下速度は1次反応で進む。  d[A]/dt=-k[A]
  • 含量低下は温度に依存し保存条件下の湿度に依存しない。
  • 反応の活性化エネルギーは変化しない。

 

この場合、含量低下速度定数は、Arrhenius式により表されることになります。さて、これに基づいてご質問に回答したいと思います。今測定する温度をT1(40℃)及びT2(60℃)と、その時の含量低下速度定数をkT1(40℃)、kT2(60℃)とします。

 

 kobs =a x exp(-E/RT)          ・・・・・Arrhenius式

 

ほとんどの場合、kT2>kT1であると考えられますので、R=1.987cal/mol/degとしますと、両温度における含量低下速度定数の比は、

 

kT2/kT1=10(E x 0.000042) ( 或は  kT2/kT1=e(E x 0.0000966) )

 

となり、従って活性化エネルギーによって反応速度定数比は、下記のようになります。

 

E=1kcal/mol  kT2/kT1=1.10

E=5kcal/molkT2/kT1=1.62

E = 10 kcal/molkT2/kT1=2.63

E = 15 kcal/molkT2/kT1=4.27

E = 20 kcal/molkT2/kT1=6.92

E = 25 kcal/molkT2/kT1=11.22

                    ・・・・・・1式

 

一方、1次で分解が生じる場合、分解率は下記の式で示されることから、αだけ分解するのに必要な時間は、次式で表わされます。

 

log [A] = log [A0 ]-k x t  ・・・・・ [A0 ]:t=0の時の薬物量

 

ゆえに logα =log[A0 ] + k40 x t40(40℃の場合)、logα =log [A0 ] + k60 x t60(60℃の場合)

 

従って、t40/t60 = k60/k40となり、 故に、t40 = 6 M の場合で、活性化エネルギーが1式の値の時には、t60は下記の期間となります。

 

E=1kcal/mol  t60=5.45 M

E=5kcal/molt60=3.70 M

E = 10 kcal/molt60=2.28 M

E = 15 kcal/molt60=1.36 M

E = 20 kcal/molt60=0.87 M

E = 25 kcal/molt60=0.53 M

回答:国際委員会
2.7 医薬品は、ある特定の条件で安定性が確認されていますが、通常自宅におく場合など温度や湿度は管理されていません。安定性は、大丈夫なのでしょうか
A:
一般に、医薬品は食品と同様、温度、湿度、酸素、光などの影響を受け、それらが高い(多い)ほど分解は進行していきます。ICHの定める安定性試験ガイドラインでは世界を4つの気候区域に分類し、日本の属するゾーンIIでは25℃60%RHの長期保存試験と40℃75%RHの加速試験が設けられております。製薬会社はこのガイドラインに従って安定性試験を行い、貯法・使用期限についての承認を当局より得ることになります。医薬品の添付文書には、室温保存(1〜30℃)や冷暗所保存(15℃以下の日光の当たらない場所)といった推奨される貯法が記載されておりますので、自宅の中で適当な場所を見つけ保管することが肝要です。
夏場や梅雨時では適当な保管場所であっても、上記貯法の範囲を逸脱する期間のあることが予想されますが、この場合、加速試験において有効期間中・流通期間中に起こり得る貯法からの短期的な逸脱の影響が確認されておりますので、短期的な温度上昇への安定性は確認されていると推察できます。また、湿度においても医薬品毎に感受性に応じた包装形態が施されておりますので、短期的な多湿に対する安定性も確保されているものと考えられます。

(参考文献、HP)
国立医薬品食品衛生研究所HP  ICHガイドライン
第14改正日本薬局方解説書     (廣川書店 刊行)
製剤機械研究会HP Q&Aコーナー「品質管理に関するもの」
[教えて!goo]医薬品の保存条件
回答:国際委員会
2.6 安定性試験の温度条件が、地域により異なると聞きますが、具体的にどう違うのか教えてください
A:
医薬品の安定性試験の条件としては、ICHのガイドラインでは世界を4つの気候区域(ゾーンI〜IV)に分類し、このうちゾーンIIの地域(ヨーロッパ、米国、日本)における長期保存試験条件として25℃/60%RH、加速試験条件として40℃/75%RHを設定しています。しかし、例えば、高温・乾燥のゾーンIIIや高温多湿のゾーンIVで安定性を考える場合、このゾーンIIの条件では、安定な期間を長く見積もってしまうことが容易に想像されます。そこで、ICHのガイドラインではこうした地域の長期保存安定性条件を、現地の実際の気温等を基に下記のように設定しています。しかし、加速試験の条件は、ゾーンIIの領域と同じです。ちなみに、ゾーンIII及びゾーンIVには次のような都市が含まれます。
ゾーンIII: 30℃/35% 主要な都市: アスワン、バグダット、ニューデリー、リヤド、スエズ
ゾーンIV: 30℃/70% 主要な都市: バンコック、ジャカルタ、マニラ、リオデジャネイロ、台北
(参)
1) ICHガイドライン:気候区域III及びIVにおける承認申請のための安定性試験成績に関するガイドライン
2) W.Grimm, Drug Develop. Ind. Pharm., 24(4),313-325(1998)
回答:国際委員会
2.5 PATに関する具体的な討議は、ASTM Committee E55で討議されていると聞きますが、このASTM Committee E55というはなんですか?役割等を教えてください
A:
FDAは、PATの標準的なプロセスの検討を、米国材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Materials)に依頼して進めておりますが、ここでは、いろいろな試験法等の標準的なプロセスに関して、ASTM下部組織の委員会を中心に具体的検討されています。PATは、Committee E55という委員会で検討されていますが、この委員会はさらに4つの組織からなっています。
E55.01 PAT Systems Management
E55.02 PAT Systems Implementation & Practice
E55.90 Exective Subcommittee
E55.91 Terminology
製剤機械技術研究会誌 13(3)、71(2004)の委員会だよりの中で、この委員会の目的等について説明されていますので参照してください。また、ASTMのホームページを参照してください。
(参)
ASTM:http://global.ihs.com/industry_stds.cfm
回答:国際委員会
2.4 PATに関連して、NIR(近赤外)の話がよく出ますが、なぜですか
A:
PATでは、医薬品製造プロセスの解析、品質管理における変動要因の明確化、変動要因内での重要項目の把握、さらに得られた成果を製造プロセスにフィードバックしてプロセスを改善することが求められています。そのためには、迅速あるいはリアルタイムで計測するシステムの確立、新規な分析法及び評価法の確立が重要であるとFDAより指摘されています。医薬品製造でのプロセス分析としてのニーズは、混合均一性、原薬の物理的及び化学的特性の変化、医薬品の安定性などの品質パラメータや製品の機能特性をIn-Line、On-Lineで評価できるということにあります。 リアルタイムで製造プロセスの進行中にキーとなるような特性をタイムリーに計測するためには、これまで汎用されてきた液体クロマトグラフ等とは違った、高速な分析技術が必要とされています。 このような状況においてNIRSは、測定対象を選ばず、非破壊?迅速に測定が可能という特徴を持つため、PATに適した分析技術として注目されているのです。NIRSは1997年にヨーロッパ薬局方(EP)の一般試験法(定性分析法)として収載され、医薬品原料粉体の受け入れ試験に採用されています。さらに、NIRSではハード面での開発が進むと同時にソフト面でも主成分回帰分析、PLS回帰分析などのケモメトリックスの手法の適用が進んでいます。最新の解析技術を取り入れたNIRS法は操作性、迅速性に富み、医薬品業界だけでなく、医学、農学、食品分野などにおいて分析方法として採用されています。 このように化学分析がオンラインでリアルタイムに測定可能になったことが、NIRSがPATに応用する新規技術の1つとして注目された要因と考えられ、本法は非常に大きな可能性を秘めていると思われます。
回答:国際委員会
2.3 製剤中の薬物の安定性を短期間で予測する方法はありませんか
A:
製剤中で薬物が経時的に引き起こす変化の速度が促進されるような高温条件(加速条件)で、変化の速度を短期間で測定し、その測定結果に基づいて通常の保存条件での安定性を予測する方法(一般に加速試験と呼ばれる)があります。
しかし、経時的変化の速度が温度によってどのように変化するか、速度の温度依存性が明らかでないと、この方法による予測はできません。薬物が化学反応によってのみ変化し、その速度の温度依存性がアレニウス式(1式)に従う場合では、精度よい予測が可能です。
また、化学反応であっても、加速条件と通常の保存条件で反応メカニズムが異なるような場合には温度依存性がアレニウス式に従わず、予測が難しいことがあります。
さらに、製剤中の薬物が経時的に結晶形の変化などの物理的変化を示す場合にも同様に、温度依存性が複雑で予測ができない場合が多くみられます。
回答:国際委員会
2.2 PATが、いろいろ話題になっていますが、なぜそんなに話題になっているのでしょうか
A:
PATは、FDAが2001年に発表した“21世紀のGMP―リスクベースドアプローチ”の中核をなす考え方ですが、わかりやすく言うと、“製造工程において、リアルタイムで品質をモニタリングしながら製造を行い、製造プロセスを終了した時点で、あらかじめ定めてあった品質が恒常的に保証できるプロセスを設計する”というものです。現在は製造が完了した時点で品質をサンプリングにより確認していることから、この方法はより品質に対する確実性・信頼性が高くなるとともに、製造終了後直ちに出荷出来る(リアルタイムリリース)可能性も出てきます。つまり、より理想に近づいた品質管理といえます。これに伴い、バリデーションに対する考え方も変わります。現実に、2004年3月12日にはFDAよりバリデーションに対する新たな考え方が発表されています(Process Validation Requirements for Drug Products and Active Pharmaceutical Ingredients Subject to Pre-Market Approval(CPG7132c.08)。ただ、分析技術を含めまだ多くの問題が残されており、全ての製剤・品質に適応するとなるとこれからの話になると思います。いろいろ問題はありますが、企業にとっても患者さんにとっても、そして行政にとっても大きなメリットがあるといえます。2003年7月4日に千葉大学製剤工学研究室でPATに関する最初の総合的なセミナーが開催され、当研究会も共催しております。また、2004年12月にはFDA主催のPATセミナーが日本で開催されます。
回答:国際委員会
2.1 一般に加速試験における温度条件は、保存温度プラス15℃だと聞いています。例えば、室温保存(25℃)とすると加速条件は40℃となります。この15℃というのは何か科学的な意味があるのでしょうか
A:
医薬品は、実際には局方の標準温度である20℃位の環境で保存されることが多く、この温度での医薬品の安定性試験結果をもとに品質保証期間、保存条件などを決めることは理にかなったことと言える。しかし、こうした条件の実験には時間がかかり、医薬品の開発に遅滞をきたすことになりかねない。アレニウス式は「温度が低ければ反応は進み難く、逆に温度が高い程化学反応が速く進行すること」についての法則性を示す経験式であり、実用上有用であることが認められている。

[アレニウス式:k=Aexp{E/RT} k:反応速度定数 A:頻度因子 E:活性化エネルギー R:気体定数 T:温度]

例えば、Eが35.8キロジュール/モルの時、40℃では25℃の2倍の速さで反応は進む。
実験時間を短縮するために設定する実験条件(加速試験)として国際的に「40℃」が用いられることが通例となり、我が国でもこの温度を用いている。 医薬品の安定性には温度の他、湿度も大きな影響を与える。湿度が高い程製剤中の水分含量が増し、加水分解を始めとする分解反応は促進される。考えられる湿度条件(0〜100%RH)のうち制御可能な高湿度として75%RHが多くの国で用いられるようになり、現在のICHでも“過酷条件”として40℃、75%RHが国際的に妥当な値として考えられている。
回答:---
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