PATに使用される分析機器(基礎編)
近赤外分析(NIR)の基礎
大崎 一男


要旨
FDA が提唱したPAT(Process Analytical Technology)技術の必要性は日本国内の製薬会社にも広く認知され、固形製剤プロセスを中心に現実的な導入が進められている。そのPAT ツールとして用いられる各種振動分光技術の中でも、近赤外分光法(NIR)はサンプルの非破壊測定、同時多項目分析、遠隔測定が可能という点から製剤プロセス監視用として最も活用されているPAT ツールと言える。
NIR は元々、農業・食品業界を中心に簡便かつ迅速分析の手法として広く使用されてきたが、ここ10 年間くらいの光学系及びコンピューターの飛躍的な進歩により、その用途が化学工業、製薬業界へと大きな拡がりを見せている1)2)。本稿ではNIR に関して、原理と特徴、最新の業界動向も踏まえて応用例を紹介する。