技術研究論文
混合粉砕法による尿素−ステアリン酸包接化合物の調製
森部久仁一、望月良子、戸塚裕一、内野智信、
深水啓朗、小口敏夫、山本恵司
(要旨)
 混合粉砕法により尿素−ステアリン酸包接化合物を調製した。また、包接化合物形成に及ぼす温度の影響も検討した。尿素とステアリン酸をモル比13 :1 で混合粉砕すると、粉末X 線回折測定において粉砕時間の増加とともに包接化による新しいピークが観察された。これは共沈法により調製した包接化合物の粉末X線回折パターンと同じであった。混合粉砕法により調製した試料の熱測定および赤外吸収スペクトル測定の結果も共沈法により得られた試料の結果と同じであった。これらの結果から混合粉砕による尿素とステアリン酸の包接化合物形成が確認された。密封加熱法でも尿素−ステアリン酸の包接化は進行するものの、完全な包接化合物の調製はできなかった。一方、尿素−ステアリン酸の物理的混合物を液体窒素で冷却した状態で混合粉砕を行ったところ、尿素−ステアリン酸の包接化は完全に進行した。以上の結果から、粉砕の機械的な応力が今回の包接化合物形成の最も重要な要因であることがわかった。